国立長寿医療研究センター病院のホームページをご覧いただきまして、ありがとうございます。2022年4月より病院長を拝命致しました近藤和泉です。
国立長寿医療研究センターの理念は、「高齢者の心と体の自立を促進し、健康長寿社会の構築に貢献する」です。戦後5%未満であった高齢化率は瞬く間に増加し、我が国は現在人口の28%以上を65歳以上の高齢者が占める世界第一位の長寿国家であります。少子化も深刻な問題で対応が必要ですが、75歳以上の高齢者のみが増えていく超高齢社会においては、従来の治す医療から「治し支える医療」へのパラダイムシフトが求められております。
病院において疾病を診断し、治療することは、ごく当然のことであり、当センターにおいても的確な診断・治療を実践していますが、高齢者においては慢性疾患が複数合併する、いわゆる多病の状態にあることが多く、身体的な問題だけではなく精神心理的、さらには社会的な問題も多く抱えていることがあります。したがって、広い視野で高齢者をとらえ、包括的な評価を行い、疾病の診断・治療を行いながら、高齢者の生活機能にも目を向ける必要があります。当センターでは、高齢者の生活機能の維持・向上をはかるケアを提供するとともに、生活機能が衰えないよう予防することも実践していきます。病気の数が増えると服用する薬剤の数も増えていきますが、多くの薬剤を服用することによる弊害にも目を配る必要があり、また低栄養も頻度の多い病態ですので、チームを組んで服用薬剤の適正使用や低栄養対策にも取り組んでいます。また、ロボットを活用したリハビリテーションを実施し、さらには介護ロボットの家庭への導入を支援するための事業を行っています。
当センターにおける最大のミッションは、心の自立を損ない、脳卒中を抜いて、要介護の原因と第一位になった認知症への取り組みです。認知症の予防、診断、治療、ケアに関して、世界最大規模のもの忘れセンターにおいて、臨床情報、心理検査、画像検査に基づく質の高い医療を提供するだけではなく、本人家族の不安を減らす教育プログラムまでを提供しています。新オレンジプランに基づき、認知症の人及びその家族の視点を重視したケアが提供できるよう、2022年の5月に落成した新棟には、もの忘れ外来、病棟、画像および遺伝子解析室および認知症に対する脳活リハビリテーション室などを複合的に配置し、全方位的な取組を行おうとしています、
体の自立を損なうロコモティブシンドロームやフレイル・サルコペニアも重要な課題です。運動器の障害や加齢による心身の衰えは、75歳以上の高齢者における重要な要介護要因であり、疾病管理とともに大変重要な病態です。当院ではそれに対応するべく、その診断、予防、治療、ケアに関して最先端の医療を提供するロコモフレイルセンターを2019年から運営しています。さらに、これも世界で初めての試みである感覚器センターを発足させ、高齢者における感覚器を眼科、耳鼻科などで別々に扱うのではなく、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚へ総合的にアプローチする診療を行っています。
そのほかのいろいろな症状にも、その要因に合わせて22の診療科で連携を取りながら適切な診断と治療を行って対応しています。いろいろ心配ごとが多いがどこにかかっていいか分からない場合には「老年内科」があります。
当院は、日頃の皆様方からのご意見を参考にさせていただきながら、全職員が協力し、患者さんやご家族とチームを組んで治療にあたりたいと思います。
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
病院長 近藤和泉